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突然降り出した雨に慌てて近くの軒下に避難したはいいが、
一向に止む気配は無く、アウラはそっと溜息をつく。

家を出た時には雲一つ無い青空が広がっていたのに・・・・と心の中で呟いた。







アウラの住むウィンダリアではとても気候が変わりやすく、雨もしばしば降っている。
ただ、普段は霧のような雨で、ウィンダリアの標準的な服ならば布地が厚手のため
フードをかぶれば多少は問題無く、色も黒などで日に当たればすぐに乾いてしまう。





しかし今日のような音を立てるような雨はあまり降る事が無く、
傘やコートを持って出てはいなかったのだ。
残る選択肢は雨宿りをするしかないのだが、家にいつ帰れるかは見当がつかなかった。


もう一度薄暗い空を見上げてから、仕方なくその場の石段に座り膝を抱える。
石から伝わってくる冷気と空気自体の冷たさに思わず身体が震えた。

不意に何かの気配がして横を見れば、ゴミの入れてある箱の陰で何か白いものが震えていた。
良く見ようと覗きこんでみれば、幼いモーグリが一匹で怯えと寒さで縮こまっていた。

まだ言葉も話せないほど幼いモーグリが一人でいるのはおかしいと周りを見まわしてみるが、
親も仲間も見当たらず、どうやら雨が降ってくる前にはぐれたようだった。



「お前、一人でどうしたの?お母さんとはぐれちゃった?一人じゃ寒いでしょう?
なんにも怖い事無いからこっちにおいで。いっしょに雨がやむの、待とうよ。」



微笑みながら話しかけ手を差し出してやれば、幼いモーグリは余程心細かったのか、
オズオズとしながらもたいした警戒も見せずに箱の影から出てきて、アウラの傍へと寄った。
脅かさない様にそっと頭を撫でてやって、ヒョイと膝の上にモーグリを乗せる。
寒さに震える幼い体を温めるようにさす擦ってやると、気持ちが良いのか目を細め、
グルグルと喉を鳴らした。







すっと目の前が陰り、何だろうと顔を上げれば見知らぬ男が雨を滴らせながら立っていた。


鳶色の長い髪を無造作に束ねて後ろに流し、ウィンダリアの戦士の服を着ていて
どこにでもいそうな格好だったが、顔に真一文字に走っている傷と
耳から下がった紅い石の付いた飾り、そしてなによりも、
何も写していないかのような冷たい瞳が男を印象付けていた。


「あの・・・・何か用ですか?」


無言のまま雨に打たれている男に、自分が何かやったのだろうかと不安になり、
少し恐々と聞いてみる。
しかし男はアウラの問いには首を振り、アウラの膝に乗っているモーグリを指して口を開いた。


「そいつを渡してもらおう。」

「えっ?」





驚いてもう一度男の指先を見るが、やはり男の指示す先はアウラの膝の上で、
震える幼いモーグリを渡せと言っているらしい。

男はアウラの返事を待たずにモーグリへと手を伸ばすが、
モーグリは怖がって鳴き声を上げながらアウラにしがみ付いてきた。
その鳴き声に一瞬手を止めるが、そのままモーグリへ手を伸ばした。

だが、男の手は届く前にアウラによってはたかれてしまった。


「ちょっと、この子が怯えてるじゃないっ。そもそもアナタ何者?
どうしてこの子を連れていこうとするの?
ちゃんと説明してくれなくちゃこの子は渡せないわっ。」


アウラはキッと男を睨み付け、モーグリを守るように抱えなおして腕に少しだけ力をこめる。

男は腕を下げ、無言のまま睨み付けるアウラを見つめ返す。
その瞳は迷うかの様にかす微かに揺らいではいるが、まっすぐにアウラを映している。

しかし、睨み付けられているというのにその中に敵意は無く、
むしろ静かな色をたた湛えていてアウラは引き込まれそうだった。
普通は思い道理にならなくて苛立ったり、怒りを露わにするというのに。







どうして良いの分からずにアウラが戸惑っていると、
唐突に男がアウラの手をつかんで無理やり立たせた。
そしてそのまま何も言わずに自分のマントに包んでしまった。


「ちょっ!ちょっとっ!!いきなり何するのよっ!放してっ!」


男はアウラの声など聞こえていないかのようにそのままアウラの肩を抱いて歩き出す。
あまりにも男との距離が近くて、アウラは赤面してしまい、言葉がなかなか出てこない。

どうやら説明するのが面倒くさかったのか、アウラごとモーグリを連れていくことにしたらしい。
そっと男の顔を仰ぎ見るが、ただ前を見ていて表情も良く分からなかった。





どうして良いのか分からずに男がなすままに歩を進めるが、
心臓の鼓動が激しくて男に聞こえないかと余計にどきどきしていた。