「噛みあわぬ車輪を持った車」


ガタガタと歪んだ音を立てながら走っている。
ゴトゴトと車の中身は不安定に揺れ続ける。

車輪たちは今にも外れそうで、
そして決して外れなかった。

車輪は、車を走らせるために存在しているから。

ガタガタと歪んだ音を立てながら走っている。
ゴトゴトと車の中身は不安定に揺れ続ける。

もし、車が走ることを止めてしまったら、
この車輪たちはどうなるだろう。

車輪は言った。
走らなくて、何が車なのだ。
私は車輪だ。車を走らせてみせよう。

車輪は言った。
車が走るのを止めてしまったなら、
車輪である私達にできることはない。





噛みあわぬ車輪を持った車は、
ただ黙って走り続けている。