欠片 雪の中旅人がふと気づく 自らが外套に儲けた隙間に 寒さに身を置いているのならば 隙間などない方が暖が取れるというのに 何故と自らに問うても答えは出ず 旅人には聞く相手はいない 否 聞こうと思う相手もいない ああ なんと悲しき旅人よ それは愛しき者を共に外套に包んだ記憶 寒さに震えそれでもお互いの温もりを分け合った遠い日の思い出 ああ なんと哀れな旅人よ 愛しき者の存在と記憶を失っても 分け合った時間と温もりを体と心の奥底に……… ああ 一人きりの旅人よ 純銀の世界に残るのは己の足跡と そして……………… 彼人の温もり |